パート・アルバイトの社会保険加入条件|契約上は対象外でも加入が必要になる場合

① はじめに
パート・アルバイトを雇用している会社では「パートだから社会保険には加入しない」「扶養に入っているから加入対象ではない」と考えているケースがあります。
しかし、社会保険の加入対象となるかどうかは雇用形態や扶養の状況ではなく、所定労働時間や所定労働日数などの加入要件に基づいて判断します。
また、雇用契約書上では加入要件を満たしていなくても、実際の勤務時間によって加入が必要となる場合があります。
今回は、パート・アルバイトの社会保険加入条件と、契約上は対象外でも実際の勤務状況によって加入が必要となるケースを解説します。
② パート・アルバイトの社会保険加入条件
まず、パート・アルバイトの社会保険について誤解されやすい点を整理します。
| よくある認識 | 判断 | 考え方 |
|---|---|---|
| パート・アルバイトだから加入しなくてよい | × | 雇用形態ではなく加入要件で判断します。 |
| 扶養に入っているから加入しなくてよい | × | 扶養の状況とは別に、その勤務先で加入要件を満たすかを確認します。 |
| 他社で社会保険に加入しているから自社では加入しなくてよい | × | 勤務先ごとに加入要件を確認します。複数の勤務先で要件を満たす場合は、二以上事業所勤務の手続きが必要です。 |
| 雇用契約書が週20時間未満なら必ず加入しなくてよい | △ | 原則は所定労働時間で判断しますが、実際の勤務状況によって加入対象となる場合があります。 |
まず、同じ事業所で働く通常の労働者と比較して、1週間の所定労働時間および1か月の所定労働日数が4分の3以上となるかを確認します。
4分の3以上であれば、パート・アルバイトという名称にかかわらず、原則として社会保険の加入対象となります。
また、4分の3未満の場合でも、厚生年金保険の被保険者数が一定数以上の企業等で、次の要件を満たす短時間労働者は加入対象となります。
| 主な要件 | 2026年8月時点の内容 |
|---|---|
| 週の所定労働時間 | 20時間以上 |
| 雇用期間 | 2か月を超えて使用される見込みがあること |
| 所定内賃金 | 月額8.8万円以上 |
| 学生 | 原則として学生ではないこと |
| 企業規模 | 原則として厚生年金保険の被保険者数が常時51人以上の企業等 |
加入要件や今後の適用拡大については、厚生労働省の
パート・アルバイトの方への社会保険の適用について
でも確認できます。
月額8.8万円以上とする賃金要件は、2026年10月に撤廃される予定です。企業規模要件についても段階的な縮小・撤廃が予定されているため、加入判定を行う時点の要件を確認する必要があります。
③ 契約上は週20時間未満でも加入対象となる場合
実務上注意したいのが、雇用契約書に記載された所定労働時間と実際の勤務時間が異なっているケースです。
例えば、採用時は週18時間程度の予定でも、人手不足やシフト変更によって週20時間以上働く状態が続くことがあります。
このように、契約書の記載だけで判断することはできません。
実際の勤務時間が増えた場合の取扱い
所定労働時間が週20時間未満でも、実際の労働時間が連続する2か月で週20時間以上となり、その状態が引き続き続いている、または続くことが見込まれる場合は、原則として3か月目の初日に被保険者の資格を取得します。
一時的な残業で直ちに加入対象となるわけではありませんが、勤務時間の増加が恒常化している場合は、実際の働き方と今後の勤務予定を確認する必要があります。
採用時に週20時間未満として加入対象外とした従業員でも、その後に勤務時間が増えた場合は、加入要件を改めて確認します。
④ 3か月目が週20時間未満でも対象外とは限らない
実際の勤務時間は毎月同じになるとは限りません。
最初の2か月は週20時間以上となっていても、3か月目だけ一時的に週20時間未満となり、その後再び週20時間以上の勤務が続くことがあります。
このような場合に「3か月目が週20時間未満だったから加入対象ではない」と機械的に判断することには注意が必要です。
加入の要否を確認する際は、3か月目の勤務時間だけでなく、その後の勤務実績、シフトの状況、勤務時間が増えた理由、当時予定されていた今後の働き方なども確認される場合があります。
その後も週20時間以上となる勤務が多く、勤務時間の増加が一時的なものではなかった場合には、一定期間の勤務実態を踏まえて加入の要否を確認されることがあります。
一方で、3か月目が週20時間未満であれば、必ず資格取得が必要になるということではありません。勤務時間が一時的に増えた事情や、その後の勤務予定などを含めて個別に判断します。
2か月連続して週20時間以上となった後、3か月目だけ週20時間未満だった場合も、それだけで対象外と判断せず、一定期間の勤務実績と当時の勤務予定を確認することが重要です。
⑤ 契約時間と勤務実態がずれるケースと会社の確認方法
契約内容と実際の勤務時間が異なる原因は、社会保険への加入を避けようとした場合だけではありません。
契約時間と実際の勤務時間がずれる主なケース
・人手不足によってシフトが増えている
・他の従業員の欠勤を補う勤務が続いている
・繁忙期だけの予定だった勤務増加が恒常化している
・採用後に業務量が増えている
・契約更新時に所定労働時間を見直していない
特にシフト制のパート・アルバイトが多い会社では、採用時の加入判定だけで終わらせず、その後の勤務状況も確認する必要があります。
会社側で確認しておきたいポイント
雇用契約書や労働条件通知書の所定労働時間と、タイムカードや勤怠システムの実際の勤務時間を比較します。
そのうえで、勤務時間の増加が一時的なものか継続しているものか、今後も同じ勤務が続く予定なのかを確認します。
契約上は週18時間でも、長期間にわたり週20時間以上の勤務が続いている場合は、社会保険の加入判定だけでなく、雇用契約書や労働条件通知書の内容自体も見直す必要があります。
労働条件の記載については、雇用契約書と労働条件通知書の違いでも解説しています。
契約更新時や勤務時間が大きく変わったタイミングで、契約内容・実際の勤務時間・社会保険の加入状況をあわせて確認するとよいでしょう。
⑥ 年金事務所の調査で実態を確認されるケースもある
年金事務所の調査では、雇用契約書上の所定労働時間だけでなく、出勤簿やタイムカード、賃金台帳などから実際の勤務状況を確認されることがあります。
日本年金機構が公表している
年金制度説明会用資料
には「調査指摘・改善指導事例集」が掲載されており、所定労働時間が週20時間未満の短時間労働者について、実際の勤務時間を確認した結果、社会保険への加入が必要となったケースが紹介されています。
この事例では、過去の勤務実績を確認した結果、実際の労働時間が恒常的に加入基準を超えていたとして、遡って加入手続きが必要とされています。
特にパート・アルバイトが多い会社やシフト変更が頻繁な会社では、社会保険に加入していない従業員について、契約内容と実際の勤務実績に大きな差がないかを定期的に確認しておくことが重要です。
⑦ まとめ
パート・アルバイトであっても、社会保険の加入要件を満たす場合には加入が必要です。
また、雇用契約書上では週20時間未満でも、実際の勤務時間が増えている場合には、勤務実態によって加入が必要となることがあります。
✓ 雇用形態や扶養の状況だけで加入対象外と判断しない
✓ 他社で加入している場合も自社の加入要件を確認する
✓ 雇用契約書上の所定労働時間を確認する
✓ 契約内容と実際の勤務時間に差がないか確認する
✓ 勤務時間の増加が一時的か継続的か確認する
✓ 2か月連続して週20時間以上となった場合は、その後の勤務予定も確認する
✓ 契約更新時や勤務時間が変化した際に加入状況を見直す
年金事務所の調査などで加入漏れが確認された場合は、過去に遡って資格取得の手続きと社会保険料の納付が必要となることがあります。加入漏れの時期によっては、原則として過去2年分の資格取得や保険料の納付が問題となる場合があります。
年金事務所への納付は、会社が従業員負担分を含めてまとめて行うため、遡及する期間や人数によっては多額になることがあります。従業員負担分についても長期間分を後から精算することになれば、本人とのトラブルにつながる可能性があります。
特に、契約上は週20時間未満でも実際には週20時間以上となる勤務が繰り返されている場合は、特定の月だけを見て機械的に判断せず、一定期間の勤務実績や今後の勤務予定を確認することが重要です。
加入漏れを後からまとめて対応することにならないよう、契約更新時や勤務状況が変化した段階で加入要件を確認しておきましょう。
