社労士と顧問契約するメリットとは?顧問料の相場・相談前の注意点

はじめに
従業員を雇用している会社では、社会保険・労働保険の手続きだけでなく、採用、労働時間、休職、退職、ハラスメントなど、人事労務に関する判断が必要になる場面があります。
こうした場面で社労士から継続的に支援を受ける方法が、顧問契約です。
顧問契約を検討する際には、「顧問社労士は本当に必要なのか」「顧問料はいくらかかるのか」「どのような社労士を選べばよいのか」と迷う会社も少なくありません。
社労士の顧問料は、従業員数だけで決まるものではありません。
主に「労務相談」「社会保険・労働保険手続き」「給与計算」のうち、何を依頼するかによって変わります。
顧問料を比較するときのポイント:
同じ月額料金でも、労務相談だけの場合と、手続きや給与計算まで含む場合では契約内容が異なります。
金額だけでなく、その料金でどこまで対応してもらえるかを確認することが重要です。
この記事では、企業が社労士へ相談・依頼できる内容、顧問料の相場、顧問契約のメリット、自社に必要な顧問レベル、社労士の選び方、契約前の注意点まで解説します。
結論
顧問社労士は、料金が安ければ良いわけでも、対応できる業務が多ければ良いわけでもありません。
大切なのは、自社にとって「ちょうど良い顧問契約」を選ぶことです。
目次
社労士との顧問契約とは
社労士との顧問契約とは、月額などの継続的な契約により、人事労務に関する相談や社会保険・労働保険手続きなどの支援を受ける契約です。
必要な業務だけをその都度依頼するスポット契約とは異なり、会社の雇用状況や社内制度を継続的に把握してもらいやすいという特徴があります。
| 比較項目 | 顧問契約 | スポット契約 |
|---|---|---|
| 契約方法 | 継続的に支援を受ける | 必要な業務だけを依頼する |
| 料金 | 月額料金が中心 | 相談時間や依頼業務ごと |
| 向いているケース | 日常的に労務相談や手続きが発生する | 特定の相談や手続きだけ依頼したい |
社労士には何を相談・依頼できる?
企業が社労士へ相談・依頼する業務は、主に次の3つに分けて考えることができます。
労務相談
トラブル相談、採用、労働時間、休職、退職、法改正などを相談します。
料金差:相談回数、連絡方法、訪問、相談内容
社会保険・労働保険手続き
入退社、社会保険、雇用保険、労災、各種届出などを代行します。
料金差:従業員数、入退社数、手続き件数
給与計算
給与・賞与計算、明細作成、振込データ作成などを行います。
料金差:人数、勤怠集計、給与体系、締日、システム
就業規則の作成、人事評価制度・賃金制度の設計、助成金申請、労務トラブルへの個別対応などは、通常の顧問料とは別料金になる場合があります。
社労士事務所によって顧問契約に含まれる範囲が異なるため、契約前の確認が必要です。
社労士の顧問料・費用相場
社労士の顧問料は、主に「相談のみ」「相談+手続き」「給与計算追加」という組み合わせで変わります。
=
従業員数
+
依頼する業務範囲
+
労務管理の複雑さ
相談のみ
手続きは社内で行い、労務判断だけ継続的に相談したい会社向けです。
相談+手続き
相談と日常的な社会保険・労働保険手続きを任せたい会社向けです。
給与計算を追加
人事労務の実務を広く外部へ任せたい会社向けです。
契約の名称や組み合わせは社労士事務所によって異なります。
「手続き顧問」という名称でも労務相談が含まれる場合と含まれない場合があり、給与計算だけを依頼できる事務所もあります。
20~30名程度の会社が、労務相談、各種手続き、給与計算を依頼する場合の顧問料は、次のような目安です。
| 地域 | 相談のみ | 相談+手続き | 給与計算追加 |
|---|---|---|---|
| 神戸 | 月2~3万円程度 | 月3.5~5.5万円程度 | +月3~5.5万円程度 |
| 大阪 | 月2~4万円程度 | 月4~6万円程度 | +月3~6万円程度 |
| 東京 | 月3~5万円程度 | 月4~7万円程度 | +月3.5~6.5万円程度 |
※上記は、2026年9月時点で各地域の社労士事務所が公開している料金情報のうち、対象人数と業務範囲を確認できるプランをもとに算出した目安です。実際の顧問料は、依頼する業務の範囲や会社の状況、各事務所の料金体系によって異なります。
地域と従業員数だけで顧問料を比較することはできません。
算定基礎届や年度更新、就業規則、助成金申請、訪問対応などが月額料金に含まれるかによって、年間費用は変わります。
給与計算についても、勤怠集計を会社と社労士のどちらが行うか、複数の締日や給与体系があるか、変形労働時間制を採用しているかなどによって料金が変わります。
社労士と顧問契約するメリット
社労士と顧問契約するデメリット・注意点
顧問契約には継続的な支援を受けられるメリットがある一方で、契約範囲や社内との役割分担が合っていなければ、十分に活用できないこともあります。
顧問契約をする際に注意しておきたい点は、次のとおりです。
毎月一定の顧問料が発生します。相談や手続きが少ない会社では、スポット契約と比較して費用対効果が低くなる場合があります。
人事労務業務を社労士へ任せきりにすると、社内に判断経験が蓄積されず、人事担当者や人事部門の成長が遅れる可能性があります。
社労士への情報共有や確認が必要になるため、社内だけで完結する場合より対応に時間差が生じることがあります。
顧問社労士は必要?会社の状態から判断する
顧問社労士が必要かどうかは、従業員数だけでなく、入退社の頻度、労働時間制度、社内の担当体制、今後の採用計画などから判断します。
従業員数別|社内と社労士の役割分担
会社の人数が増えると、単純に手続きの件数が増えるだけではありません。
相談内容や社内調整が複雑になり、外部の社労士だけでは完結しない業務も増えていきます。
ここでは、従業員規模に応じた一般的な役割分担の考え方を整理します。
まとめて外注しやすい段階
社労士のみで対応
労務相談、手続き、給与計算まで外注することで、専属の労務担当者を配置せずに運用できるケースがあります。入退社数や勤怠の複雑さが大きくなければ、費用対効果を得やすい傾向があります。
外注範囲を見直す段階
社労士、または一部内製化を検討
すべてを外注すると費用負担が大きくなることもあります。社内体制や業務量を確認し、給与計算のみ内製化するなど、業務ごとに役割を分ける余地が出てきます。
社内担当者との連携が重要
社労士+人事メンバーで対応
社内に専属の担当者がいた方が、人事労務の動きが円滑になる場面が増えます。日常業務を委託するだけでなく、人事担当者と社労士が連携し、判断の支援や担当者の育成まで行う形が考えられます。
人事部門と外部専門家で支える段階
社労士・社労士チーム+人事部で対応
日常業務をどこまで委託するかは会社の方針によりますが、労務管理の負担や社内調整が増えるため、社内に専属スタッフを置く必要性が高まります。人事部門と社労士、必要に応じて社労士側のチームが連携する体制が適しています。
特に51人以上の規模では、社内の人事担当者との情報共有や判断支援、担当者の育成も重要になります。事業拡大に対して管理体制の整備が遅れないよう、社内と社労士の役割を早めに整理しておくことが大切です。
従業員数に応じて必要になる就業規則、安全衛生管理、社会保険などの主な対応は、「従業員数で変わる労務管理|10人・50人・100人等で必要となる主な対応」で詳しく解説しています。
給与計算を社内で行うか、社労士などへ委託するかを検討する場合は、「給与計算の内製・外注を比較|会社が確認すべき費用・リスク」も参考にしてください。
安い顧問と高い顧問は何が違う?
顧問料の差は、単純なサービス品質の差とは限りません。
同じ「顧問契約」でも、次のような対応範囲や支援体制が異なります。
| 比較項目 | 低価格プランの例 | 支援範囲が広いプランの例 |
|---|---|---|
| 対応範囲 | 相談など特定業務に限定 | 相談、手続き、制度運用まで対応 |
| 相談回数 | 回数・時間制限がある場合 | 日常的な相談に対応 |
| 手続き範囲 | 別料金または対象外 | 日常手続きを含む場合 |
| 担当者 | 窓口や担当が分かれる場合 | 担当者が継続的に会社を把握 |
| 訪問対応 | オンライン中心 | 定期訪問や現場対応を含む場合 |
| 制度設計 | 原則として対象外 | 人事・賃金制度まで支援 |
| トラブル対応 | 一般的な助言が中心 | 個別事案を継続的に支援 |
| レスポンス | 回答期限や優先対応を要確認 | 優先対応を定めている場合 |
安い顧問が悪く、高い顧問がよいとは限りません。
自社で利用しない支援が多ければ過剰な契約となり、必要な支援が含まれていなければ顧問契約を十分に活用できません。
近くの社労士と遠方の社労士はどちらがよい?
オンライン対応が広がったことで、社労士との距離だけを基準に選ぶ必要性は以前より低くなっています。
ただし、求める支援によっては、会社へ来てもらえる距離が重要になります。
遠方でも問題になりにくいケース
- 日常相談はメール・電話・オンライン中心
- 社会保険・労働保険手続きが中心
- 給与計算を依頼したい
- 就業規則作成をオンラインで進められる
近隣の社労士が向いているケース
- 従業員面談への同席を求める
- トラブル時に会社へ来てほしい
- 管理職・ハラスメント研修を依頼したい
- 定期訪問や現場確認を重視する
顧問社労士の選び方と相談・契約前のチェックポイント
料金表やホームページだけでは分からない部分もあるため、相談時の面談や見積書を通じて、実際の対応範囲や相談体制を確認することが大切です。
労務相談、社会保険・労働保険手続き、給与計算などの基本的な業務に加え、必要に応じて労基署等の調査対応、人事評価制度・賃金制度、労務DDなどに対応できるか確認する。
相談回数や相談時間にどのような制限があるか、社会保険・労働保険手続きが月額料金に含まれるのか、件数ごとの従量課金となるのか、年度更新や算定基礎届などが別料金ではないかを確認する。
業種特有の勤務形態や労務管理上の課題を理解しているか、同じ業種や近い規模の会社への対応経験があるかを確認する。
誰が主担当になるのか、社労士本人に直接相談できるのか、担当者が継続的に自社の状況を把握する体制になっているかを確認する。
メール・電話・チャット・オンライン面談など、どの相談方法に対応しているかを確認する。日常的に細かな相談が発生する会社では、相談手段が限られていると確認ややり取りに時間がかかる場合があるため、自社が使いやすい方法で相談できるかを確認しておく。
現在利用している勤怠管理、給与計算、人事労務システムや、今後導入を検討しているシステムに対応できるかを確認する。単にシステム名を知っているだけでなく、自社の運用方法に合わせて連携や対応ができるかも確認する。
就業規則、助成金、調査対応、従業員面談、訪問、人事制度・賃金制度の設計などが顧問料に含まれるか、別料金となる場合の基準が明確かを確認する。
最低契約期間、自動更新の有無、解約時の予告期間などを確認する。
労務相談、各種手続き、給与計算など、当法人の支援内容と料金の目安は「サービス内容・料金」でご案内しています。
社労士への相談・顧問契約でよくある質問
「ちょうど良い顧問契約」とは
社労士の顧問料は、主に「労務相談」「社会保険・労働保険手続き」「給与計算」のうち、どこまで依頼するかによって変わります。
同じ従業員数でも、相談のみの顧問と、日常的な手続きや給与計算まで含む顧問では料金が異なります。
相場を確認する際は、金額だけでなく、算定基礎届や年度更新、就業規則、助成金、訪問対応などが含まれているかも確認する必要があります。
自社にとって過剰なサービスに、高額な顧問料を支払う必要性は高くありません。
一方で、必要なサービスが含まれていない契約を安さだけで選んでしまうと、顧問社労士を活用する価値は低くなります。
大切なのは、金額だけを比較するのではなく、現在の課題や今後の事業展開を踏まえて、自社が必要とする支援と顧問契約の範囲が合っているかを確認することです。
また、採用の増加や拠点の拡大、制度の導入などにより、将来的に現在の契約では支援内容が不足すると予想される場合には、少し早めに相談や準備を始めることで、社内体制や契約内容を無理なく移行できるケースもあります。
何を依頼すべきか分からない段階でも、現在の体制や課題を確認しながら、必要な支援内容を一緒に整理できます。
