試用期間と雇用期間の違い|本採用と契約更新の注意点

① はじめに
従業員を採用する際に「まず3か月働いてもらい、その後も雇用を続けるか判断したい」と考える会社は少なくありません。
このような場合に、会社としては3か月後に雇用を継続するか判断できると考えていても、実際の雇用契約書には
・雇用期間:期間の定めなし
・試用期間:3か月
と記載されているケースがあります。
しかし、この内容は3か月間の有期労働契約ではありません。
期間の定めのない労働契約を締結したうえで、その契約中の最初の3か月を試用期間として設定したものです。
試用期間は、労働契約中に設ける特別な期間です。
会社が意図している契約内容と実際の書面の記載が一致していないと、予定していた時点で雇用を終了できないなどの問題が生じる可能性があります。
雇用期間と試用期間の違いを整理し、採用時に会社が確認しておきたいポイントを解説します。
② 雇用期間と試用期間の違い
雇用期間は、会社と従業員との労働契約がどのような期間で継続するかを示します。
期間を定めなければ無期労働契約となり、開始日と終了日を定めれば有期労働契約となります。
正社員は、期間の定めのない労働契約であることが前提となります。
一方、試用期間は、既に成立している労働契約の中で、実際の勤務を通じて能力や適性、勤務態度などを確認するために設ける期間です。
| 項目 | 雇用期間 | 試用期間 |
|---|---|---|
| 意味 | 労働契約そのものが継続する期間 | 労働契約中に設ける特別な期間 |
| 主な目的 | 期間の定めの有無や契約期間を明確にする | 能力や適性、勤務状況などを確認する |
| 期間終了時 | 有期契約では更新するか否かを判断する | 労働契約自体は当然には終了しない |
| 設定方法 | 期間を定めなければ無期契約、期間を定めれば有期契約となる | 無期契約にも有期契約にも設定できる |
雇用期間と試用期間は、どちらか一方だけを選択するものではありません。
例えば
・雇用期間:期間の定めなし
・試用期間:3か月
有期労働契約の場合
・雇用期間:1年
・試用期間:3か月
という設定が考えられます。
有期労働契約に試用期間を設けた場合、3か月の試用期間が終了しても、1年間の雇用期間が終了するわけではありません。
試用期間中であっても労働契約は既に成立しており、期間が終了すれば会社の判断だけで自由に雇用を終了できるものではありません。
③ 期間終了時の取扱い
試用期間が終了する場合
試用期間が終了しても、労働契約そのものが当然に終了するわけではありません。
実際の勤務を通じて問題行動や明らかな能力不足が判明した場合には、本採用をしない方向で検討することも考えられます。
試用期間中に初めて判明した事情については、通常の解雇よりも、本採用を拒否する理由として整理しやすい場合があります。
ただし、本採用拒否も法律上は解雇に当たります。
単に「会社に合わなかった」「期待していたほどではなかった」という理由だけで、本採用を拒否できるわけではありません。
どのような業務上の問題があったのか、会社がどのような指導を行ったのか、その後に改善が見られたかなどを具体的に整理する必要があります。
本採用を見送る可能性がある場合は、問題が発生した時点で本人に伝え、必要な指導や改善の機会を設けることが重要です。面談内容や指導内容、その後の改善状況についても記録を残しておきましょう。
雇用期間が終了する場合
有期労働契約では、契約締結時に明示した更新の有無や更新判断基準に基づき、契約期間満了時に会社が更新するか否かを判断します。
更新判断基準としては、勤務成績、勤務態度、業務遂行能力、契約期間満了時の業務量、会社の経営状況などが考えられます。
ただし、更新判断基準を定めていれば、会社が自由に更新を拒否できるという意味ではありません。
契約を何度も更新している場合や、採用時や更新時の説明によって従業員に更新への合理的な期待が生じている場合には、雇い止めが制限されることがあります。
また、有期労働契約を期間途中で解雇するためには、やむを得ない事由が必要とされており、期間の定めのない労働契約における通常の解雇よりも厳しく判断されます。
有期労働契約は、期間を定めているから自由に終了できる契約ではありません。契約期間満了時の更新判断と、契約期間途中の解雇は分けて考える必要があります。
④ 実務上よくある混同
実務上、特に注意したいのは、会社の意図と労働条件通知書の記載が一致していないケースです。
会社としては「まず3か月間雇用し、その後も契約を続けるか判断したい」と考えているにもかかわらず、雇用契約書に
・試用期間:3か月
と記載しているケースがあります。
この場合、3か月間の有期労働契約を締結したことにはなりません。
期間の定めのない労働契約の中に、3か月間の試用期間を設けた契約となります。
3か月が経過しても労働契約はそのまま継続するため、会社が雇用を終了する場合は、本採用拒否として解雇の有効性が問題になります。
会社が3か月後に更新するか否かを判断したいのであれば、雇用期間、更新の有無、更新判断基準を明確に定める必要があります。
一方、正社員として長期雇用することを前提に、最初の3か月間で能力や適性を確認したいのであれば
・試用期間:3か月
という設定が考えられます。
採用時には、一定期間後に本採用の適否を判断したいのか、契約を更新するか否かを判断したいのかを整理することが重要です。
⑤ まとめ
雇用期間は労働契約そのものの期間であり、試用期間は労働契約中に設ける特別な期間です。
会社が一定期間後に本採用の適否を判断したいのか、契約を更新するか否かを判断したいのかによって、設定すべき内容は異なります。
この点が曖昧なままひな形を使用すると、会社が意図していた契約内容と、実際に成立した労働契約が一致しない可能性があります。
採用時には、雇用期間と試用期間の違いを整理したうえで、労働条件通知書や雇用契約書に正しく反映することが重要です。
また、常時10人以上の労働者を使用する事業場で試用期間を設ける場合は、就業規則にも試用期間の長さや取扱いを明記し、個別の労働条件と内容を一致させておきましょう。
