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労基署から是正勧告を受けたら?会社の対応と是正報告書の提出

労基署から是正勧告を受けたら?会社の対応と是正報告書の提出

① はじめに

労働基準監督署の調査を受けた結果
法令違反があると判断された場合には
是正勧告書が交付されることがあります。

また、是正勧告書とあわせて
指導票が交付されることもあります。

どちらも会社に改善を求める書面ですが
指摘の位置づけや、会社が取るべき対応は
全く同じというわけではありません。

是正勧告書は、法令違反と判断された事項の是正を求める書面です。
指導票は、指針や労務管理上の問題などを踏まえて改善を求める書面です。

そのため、交付された書面をまとめて処理するのではなく
まず是正勧告書と指導票を分け
指摘の根拠と対応の優先順位を整理することが重要です。

労働基準監督署から連絡を受けた段階での対応や
調査前に確認すべき資料については
「労基署から電話が来たら?会社が確認すべき対応と準備」で解説しています。

② 是正勧告書と指導票の違い

労働基準監督署の調査後に交付される書面には
主に是正勧告書と指導票があります。

両者の違いは、次のように整理できます。

書面 指摘の位置づけ 会社の基本対応
是正勧告書 労働基準監督署が法令違反と判断した事項 指摘の根拠と事実関係を確認し、違反状態を是正する。認識が異なる場合は客観的な根拠を示して説明する
指導票 法令違反として是正勧告する事項ではないものの、改善が必要または望ましいと判断された事項 指導の根拠と目的を確認し、会社の実情に合った改善方法を検討する

是正勧告書と指導票を同じ強さの指摘として扱うと
本来優先すべき法令違反への対応が遅れたり
法律上義務づけられていない具体的な方法まで
必要以上に受け入れてしまったりすることがあります。

まずは書面ごとに
何が法令違反として指摘されているのか
何が改善指導にとどまるのかを区別する必要があります。

③ 是正勧告は法令違反として優先的に対応する

是正勧告書には
違反していると判断された法令の条文
指摘された事項、是正期日などが記載されています。

会社の対応として
どのように違反状態を改善するのか
または事実確認を行い
違反状態ではないことを示す根拠を提出するのかなどを
検討する必要があります。

そのために、まずは次の事項を確認します。

・どの法令について違反を指摘されているか
・どのような事実をもとに違反と判断されたか
・対象となる従業員や期間
・是正期日はいつまでか
・是正報告時に提出を求められている資料
・使用停止等命令など、別の書面も交付されていないか

是正勧告を受けたからといって
事実関係を確認せずに
監督官から示された内容をそのまま受け入れるべきとは限りません。

例えば、未払い残業代を指摘された場合でも
対象となる労働時間、賃金の計算方法
固定残業代や各種手当の取扱いなどを確認しなければ
正確な不足額を判断することはできません。

指摘内容に認識の相違がある場合は
会社が保管している勤怠記録や賃金台帳などを確認し
違反状態ではないと判断できる根拠があれば
その内容を整理して担当官へ説明します。

一方、確認の結果、違反状態が認められる場合には
是正期日を踏まえて改善方法を検討し
違反状態の解消と再発防止を進めます。

注意
是正勧告には速やかな対応が必要ですが
事実確認を省略して指摘内容をそのまま認めることとは異なります。

④ 指導票への対応を検討する

指導票についても
交付された以上、何も確認せず放置することは適切ではありません。

一方で、指導票に記載された内容は
通常、是正勧告書に記載された法令違反とは
位置づけが異なります。

実際の調査では
監督官から指導内容に沿った改善を強く求められ
会社側が「必ずその方法を採用しなければならない」と
受け止めてしまうことがあります。

しかし、監督官から強い表現で説明された場合でも
指導された具体的な方法そのものが
法律上義務づけられているとは限りません。

指導票への対応を検討する際は
少なくとも次の点を整理する必要があります。

・指導の根拠となる法令、指針やガイドライン
・現在の運用について何が問題とされているか
・指導された方法が法律上の義務なのか
・会社の規模、業務内容や人員体制で実施可能か
・別の方法でも指導の目的を達成できないか
・全面的な変更ではなく、段階的な改善が可能か
・直ちに実施できない部分について合理的な理由があるか

例えば、特定の勤怠管理方法への変更を求められた場合でも
そのシステムや方法だけが
法律上認められた唯一の管理方法とは限りません。

現在の方法でも労働時間を客観的かつ適切に把握できるのであれば
現行の運用を説明したうえで
不足している部分を補う対応も考えられます。

また、直ちに全面的な変更を行うことが
会社の規模や業務の実情から難しい場合には
優先度の高い部分から改善し
残る課題は段階的に対応する方法も考えられます。

監督官の指導をすべて無条件に受け入れる必要があるとは限りません。
一方で、指導票だから対応しなくてよいと判断することも適切ではありません。

法令上の義務と指導上の要請を区別し
指導の目的を踏まえたうえで
会社が継続して実行できる改善方法を検討することが重要です。

⑤ 事実関係を確認し、是正方法と再発防止策を検討する

是正勧告書と指導票の内容を整理した後は
指摘された事実と会社の実際の運用を照合します。

確認する資料は指摘事項によって異なりますが
主に次のようなものが考えられます。

社内規程・労使協定
・就業規則、賃金規程
・36協定などの労使協定

労働条件・勤怠・賃金に関する書類
・雇用契約書、労働条件通知書
・タイムカードなどの勤怠記録
・賃金台帳、給与明細

その他の記録・資料
・健康診断や安全衛生に関する記録
・従業員への説明資料や同意書

このとき、書面が整っているかだけでなく
規程や契約内容と実際の運用が一致しているかを
確認することが重要です。

例えば、未払い残業代について指摘された場合は
タイムカードに記録された時間だけを見るのではなく
次のような点も確認する必要があります。

・始業前や終業後に業務を行っていなかったか
・休憩時間中に電話対応や来客対応をしていなかったか
・残業の申請記録と実際の退勤時刻に差がないか
・固定残業代が適切に運用されているか
・各種手当を残業代の計算基礎から除外できるか

また、就業規則に残業の事前申請制を定めていても
実際には申請しにくい運用になっていたり
会社が申請外の残業を把握しながら放置していたりすれば
規定があることだけで問題がないとは判断できません。

反対に、監督官が前提としている事実と
会社が保管している記録や実際の運用が異なる場合は
客観的な資料を整理し
違反状態ではないことを担当官へ説明する方法も考えられます。

事実確認の結果、違反状態が認められる場合は
過去の違反状態を解消する対応と
今後の再発を防ぐ対応を分けて検討します。

指摘内容 過去の状態を解消する対応 今後に向けた対応
未払い残業代 対象者・対象期間・不足額を確認し、追加支給する 労働時間の把握方法や給与計算を見直す
36協定の未届・不備 必要な協定を締結して届け出る 更新時期や時間外労働の管理方法を定める
労働条件の明示不足 必要事項を記載した書面を交付する 入社時の交付・確認手順を整える
就業規則の未届 意見書を添付して届け出る 改定・届出・周知の管理方法を決める
健康診断の未実施 対象者を確認して健康診断を実施する 対象者と実施時期を継続的に管理する

是正勧告への対応は
不足している書類を後から作成するだけでは完了しません。

例えば、就業規則を改定しても
勤怠管理や給与計算の方法が変わっていなければ
同じ違反を繰り返す可能性があります。

反対に、監督官から示された方法以外でも
違反状態を解消し、再発を防止できるのであれば
会社の実情に合った別の運用を検討できる場合があります。

形式的に書類を整えるだけでなく
会社が継続して実行できる管理方法に落とし込むことが重要です。

⑥ 是正・改善報告書を作成する

必要な是正や改善を行った後は
実施した内容を報告書にまとめます。

報告書には、一般的に次の事項を記載します。

・是正勧告書や指導票を受け取った年月日
・指摘された法令や事項
・会社が確認した事実関係
・実施した是正・改善内容
・是正・改善を行った年月日
・今後の管理方法や再発防止策

「今後注意します」
「適正に対応します」といった抽象的な表現だけではなく
何を、いつ、どのように変更したのかを具体的に記載します。

必要に応じて
次のような資料も添付します。

・改定後の就業規則や労働条件通知書
・届け出た36協定などの写し
・未払い賃金の計算資料
・振込記録など支払ったことが分かる資料
・変更後の勤怠管理方法が分かる資料
・従業員への周知資料

指導票について
監督官から示された方法とは異なる対応をする場合は
単に「対応しない」と記載するのではなく
現在の運用や指導の目的を満たす代替策
会社が実施する改善内容などを整理して説明します。

期日までに対応を完了できない場合
その理由と今後の対応予定を整理したうえで
早めに担当官へ連絡し
報告期日について相談することが望ましいでしょう。

⑦ 対応を進める際の注意点

是正勧告書や指導票への対応では
次のような処理を避ける必要があります。

・是正勧告書と指導票を区別せずに処理する
・事実確認をせず、その場で対応を約束する
・指導された方法を法律上の義務だと思い込む
・指導票だから対応不要だと判断する
・対象者や対象期間を会社だけの判断で狭める
・過去の勤怠記録や賃金台帳を書き換える
・書類だけを整え、実際の運用を変更しない
・担当官へ連絡せず、報告期限を過ぎる

特に未払い賃金や労働時間の指摘は
対象範囲や計算方法によって
会社の負担や対応内容が大きく変わることがあります。

また、指導票への対応についても
監督官との関係だけを考えて全面的に受け入れると
会社が継続できない管理体制になる可能性があります。

書面の種類、指摘の根拠、会社の実情を確認してから
対応方針を決めることが重要です。

⑧ まとめ

労働基準監督署から是正勧告書や指導票を受け取った場合は
次の順番で対応を進めます。

会社が確認しておきたい対応の順番

✓ 是正勧告書と指導票を分け、指摘の根拠と対応期日を確認する
✓ 就業規則、勤怠記録、賃金台帳などを確認し、指摘された事実と実際の運用を照合する
✓ 法令違反が認められる事項は是正し、継続できる再発防止策を整えたうえで報告する

指摘内容に認識の相違がある場合は
客観的な資料に基づいて会社の見解を整理し
担当官へ説明することが重要です。

また、指導票については
指導内容を無条件に受け入れるのではなく
その根拠と目的を確認し
会社の規模や業務内容に合った改善方法を検討します。

労働基準監督署の調査では
監督官から直接ヒアリングや資料確認を受けることもあるため
質問に適切に回答できるか
指摘を受けた際にどのように対応すればよいかなど
不安を感じる会社も少なくありません。

調査前の準備や監督官への説明
指摘を受けた後の対応方針に悩む場合は
専門家へ相談しながら進めることをおすすめします。

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